8.ドックの仕組み(1)


I. 船体損傷に関する一般的な事柄


6.ドックはどの様な仕組みになっているか

船の喫水線から下は何時も水に浸かっているので船体や舵プロペラを調べるためにはドックに入れる必要がある。貨物船の場合はドックに入れて船底などの検査を行うのは5年に2回と定められている。ここでは、ドックに就いて取り上げることとする。


6.1 ドックの種類

普通ドックと呼ばれる設備は乾ドック(Dry dock)と呼ばれており、水深の深い海岸に掘割を堀りその中に船を引っ込み扉を閉めて中の海水を排水し、風呂桶の中に船を入れる様な設備を言う。船の喫水線以下の部分を調べる設備には次の様なものがある。

1)引き上げ船台(Slip way)
陸から海岸の適当な深さの所まで長い滑り台を設けて、ウインチで船を陸に引き上げる設備で簡単でなので小型船用として小規模な造船所に広く設備されている。
概略は第1図の通りである。



第1図 引き上げ船台


2)乾ドック (Dry dock)
海岸に設けられた掘割で、最も一般的な設備である。大きいものは長さが500m以上、所謂、100万トンドックと称されるものである。

3)浮ドック (Floating dock)
浮き沈みが出来る大きな容器に船を入れ、ドック内の海水を排水することによりその浮力で船も一緒に持ち上げる設備である。海岸線が狭く乾ドックを設備出来ない造船所で使用例が多い。

4)シンクロリフト(Synclo-lift)
掘割の中に船を引き込み底にある台をウインチで船ごと引き上げる設備である。特許がからんでおり、日本では千葉県にある造船所に設備されているだけである。
以下、乾ドック、浮ドック及びシンクロリフトに就いて概略を述べることとする。


6.2 乾ドック
 
ここでは,ドック(Dock)に入った状態で発見される船底外板、船側外板およびビルジキールの損傷を取り上げ,これに先だって,ドック内での注意事項,損傷発見法などを述べることとする。

6.2.1 どの様にしてドックに船を入れるのか
入渠の方法はドックによって多少違うのでその一例を紹介する。

“很擇猟汗
予めドックを空にし入渠する船の重量配分,船底構造に応じて,船体重量が集中してかかる個所は盤木を密にする。座礁により船底に大きな破口が生じていることが判っている場合は,入渠前にダイバーにより詳細に損傷部を調査し,それに応じて盤木を配置しなければならない。盤木の上にチェンブロックが置き忘れてあり,これに気がつかずに船を入渠させ,キールに孔をあけてしまった例もある。また,止むを得ず,一部貨物を積んだ状態で入渠させる場合にもその重量に応じた配置が必要になる。





写真1 盤木の配列(1)

クレーン車とブルドーザーで配列が行われている。これは縦通
隔壁(longitudinal bulkhead)が4条ある巨大タンカーを入渠させ
るための準傭で,盤木はロンバルの下に4条配置されている。





第2図 巨大タンカーの船体と盤木の位置





写真2 盤木の配列(2)

縦隔壁(ロンバルと呼ばれる)2条の通常のタンカーや普通の貨物船
のための配列。後部は機関室で重量が大きいため配列が密になっ
ている。このドックは縦に二つ繋がっており前方のドックでは新造
船が建造中である。修繕船を入渠させるときは中間の扉を閉める。





写真3 Fales keelのある船

盤木が柔らかかったのかfales keelのある小型漁船を入渠させ
キールが盤木を圧壊し、キールを含めた船底にも損傷が生じた。





写真4 船底の大損傷

船底が凹入している部分では盤木の高さを高くしておく。




▲疋奪への゚呆?
盤木の配列が終わったら、本船を引き込むためにドックに海水を゚甫・B

ドックゲート(ドックの扉)の開放
本船がドックに入れるようにする。この時点で,本船はドックに向て曳航されることになるが,ドックの条件に応じ指定されたトリム(trim、船の前後方向の傾き)調整をしておく必要があり,場合によってはホールドに部分゚呆?をする必要もある。ヒール(heel、左右方向の傾斜)は極力少なくし,最悪の場合でも0.5°以内におさめる。なお,入渠後,バラストを排出したり,重量物を搭載したりして,出渠時に船体が浮上する際,大きくヒールし思わぬ事故をまねくことがあるので注意を要する。
  
に楞イ琉き込み
数隻のタグに曳航されて本船はドックに向う。入渠の方法はドックにより異なり,船首両舷からロープをドック・サイドに伸し,端部を地上に固定し,中心線を確認しながら本船のウインチで捲きながらドックに入れる方法,地上のロープを本船の船首両舷に取り,地上のウインチで捲いて引き込む方法,大きなドックでは,曳船がそのまま本船を引き込む方法なども採用されている。汚物タンクを備えていない船では,この時点で便所の使用が禁止される。大切なことは,本船のキールが,正しくキール盤木の上に来るよう位置決めをすることである。これらの作業は本船のトリム、ヒールの調整意外は造船所のドック責任者(ドックマスター)の指揮のもと造船所の作業員によって行われる。





写真5 ドックヘの引込み(1)

世界最大級のフランスの超大型タンカー“PIERE GOULLMOT”





写真6 ドックヘの引込み(2)




ゥ疋奪・ゲートの閉鎖
本船が定位置に落ち着いたら排水のためにドックゲートを閉鎖する。ドックゲートはポンツーン式(箱型)のものが多いがヒンジ式や起倒式のものもある。




写真7 閉鎖中のドックゲート

このゲートは起倒式である。





第3図 起倒式ドックゲート





第4図 ヒンジ式ドックゲート

100万トンドックヘの55万トンタンカーの入渠、ドックの幅に余裕が
あるので、曳船が直接引込んでいる。このドックのゲートはヒンジ式
で写真ではダクのブリッジの上部附近がゲートのヒンジになっている。



Ε疋奪内の排水
ドックに接した地下に設けられた大きなポンプで排水が行われる。排水が進むにつれて浮力が減じ,若し船体のトリムが盤木の傾斜と完全に一致していれば船底は同時に盤木の上に乗る(キール・タッチ、keel touch)ことになるが,普通は船尾から盤木に接し,船尾材のシュー・ピース(shoe piece)が最初に盤木に接する。さらに排水が進むと船体重量は水から盤木に支えられるようになる。船型が痩せた船では,船の横転を防ぐため,ドックサイドと本船船側の間に適当な間隔で丸太(サイド・ショワ一、side shore)をかませる作業が行われる。



写真8 キール・タッチ

排水が進みキール・タッチし既に左舷
後部にはタラップも取付けられている。



Д疋薀ぁΕ▲奪廖米渠完了)
完全に排水が終わると本船との往復のためのタラップの取付け、陸上電源への切替え、冷凍機などへの冷却水供給のため,ケーブルやホースの接続作業が行われる。外地の場合は陸電の電圧が本船の電圧と大きく異なることがあるので、エンジニヤは注意を要する。以上は排水完了ドライドックにおける入渠作業の一例で、浮ドックの場合は多少様子が変わってくるが冗長になるので浮ドックについては省略する。




写真9 ドライアップ

40万トンタンカーが船底を現した。左手前には8万トンタ
ンカーが同時に入渠、右側には曳船も序に入渠している。





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