14.船側の損傷(2)


I. 船体損傷に関する一般的な事柄


何処が壊れ易いか(4)

8.5.3 獅子身中の虫が外板に表われる

 船底外板の場合は、二重底内部など,船体内部の傷が船底外板に影響を及ぼすことは比較的少なく.例えば、船底外板の内面に設けた補強材端部で、外仮に亀裂が生じたり、測深管下端で外板に穴があく例がある程度である。しかし、船側外板の場合は、船体内部の構造上の不連続箇所、工事不良部分等に亀裂が発生し、これが外板に及び,船側外板に亀裂を生じる例が珍しくない。この種の損傷は殆どが亀裂として現れ、そこが貨物艙や機関室の場合は直接船内浸水ということになるのでたちが悪い。第1、2図に,この種の損傷の出易い個所を示し,8.5.2と同様な手順で,その内容を取り上げることとする。


第1図 内部の損傷が外板に亀裂を発生させ易い個所(一般貨物船)



第2図 内部の欠陥が外板に亀裂を発生させ易い個所(撒積貨物船)



(1) No.1 hold前部 (船首隔壁後部)

 No,1 Hold前部の外板には往々にして亀裂が生じていることがある。これは,第3図のように船首隔壁に取付けられた肘板(Bracket)端部の亀裂が進行し,外板に至り,外板が割れるものや,船首防撓桁(Panting stringer)の肋骨貫通部切欠き部で外板が割れるものがある。この種の亀裂は,写真1に示すように星状に生じることが多い。船首隔壁は,船首楼後端附近にあり,また船首艚(Fore peak tank)の船底プラグの直後に位置しているので,外から見てもその位置は判り易い。したがって,この部分の前後数フレーム間を上から下に眺め,一層甲板の船では,上甲板から下方,二層甲板の船では第二甲板から下方,約2m,4m、6m附近の位置にPanting stringerがあるので,特にその附近を注意すれば,亀裂は外からでも比較的容易に発見できる。船首艚(Fore peak tank)は単位体積当たり鋼材が多く配置されているのに対してNo.1 holdは配置されている鋼材の量が船首隔壁一枚を境にしてかなり少なくなっているので構造的な不連続による損傷が出やすくなる。修理方法としては,亀裂端部にStop holeを開け,二重張りを施すか亀裂部の外板を切替える方法が採られる。この場合も、再発防止のため、例えば,Stringerの切欠き部に塞ぎ板(Collar plate)を設けたりして亀裂の原因となった部分を補強しておく必要がある。


第3図 No.1 Hold 前部の外板の亀裂



写真1 外板に生じた星状亀裂
亀裂部を磨いてカラーチェックしたもの



第4図 骨の貫通部と塞ぎ板(Collar plate)



第5図 外板の星状亀裂(A)と隔壁に沿った亀裂(B)



写真2 外板の修理工事



(2) No.1 Hold後部

 (1)と同様,Panting stringerの後端に設けられた肘板付近の外板に亀裂が生じる例がある。これは(1)と比べれば例は少ないが、No.1 Ho1d後部の船側外板にも,一応の注意が必要である。


(3) ビルジキール取付部

 ビルジキール自体の損傷については,既に取り上げたが,ビルジキールの先端や,ビルジキール自体の継手の部分で,外板に亀裂が生じることがあるので,この部分の外板の状態には注意しよう。


写真3 ビルジキール端部



(4) Top side tank下部とHopper tank部

 最近の貨物船は,穀物の積付に便利な様に上甲板の艙内側部にタンク(Top side tank)を有する船が多くなったが,船首部のタンクで,第6図に示すような亀裂が,各肋毎に生じた例があり,ドックサィドまたは岸壁から,Top side tank下部を眺め,同じレベルにおいて一定間隔で汚れや湿りが見つかったならば、亀裂の疑いが濃い。


第6図 Top side tank 下部における外板の亀裂



(5) 船橋楼 (Bridge) 端部の舷側厚板

 中央部に船橋楼を配置した三島型(Three Islander)の船は、最近殆ど建造されなくったが,この種の船では船橋楼端部で舷側厚板(Sheer strake)に亀裂が生じる例が昔からしばしば報告されている。大きな亀裂に成長すれば誰にでも判るが,こうなってからでは遅いので,三島型の船では,岸壁やデッキの上から船橋楼端部のSheer strakeの上縁をよく注意し,局部的に塗装が落ちていたり,他と違う色の錆が生じていたら,その部分を詳細に調査するとよい。もし亀裂が発見されたならば,程度にもよるが,Sheer strakeを切替える必要がある。この部分の Sheer strake は亀裂の発生し難い鋼材が使用されているのでらツの損傷は船の中央部のみに発生し,船首楼の後端や,船尾楼の前端には現れない。ただし切替える場合材料の手配が難しい。三島型でなくとも長船首楼あるいは長船尾楼を有する船でその端部が船の中央付近に位置している場合は,亀裂が発生する可能性があるので注意が必要である。


第7図 長船首楼(Long f’cle)及び長船尾楼(Long poop)の船では端部に注意する



(6) 船尾艚 (Aft peak tank)の部分

 船尾形状,プロペラと船体との間隔,プロペラの翼の枚数。主機回転数などが互いに関連して起きる船尾振動が最近問題になって来ている。船尾振動により, 船尾艚内の肋骨や肋板に亀裂が生じ、それが外板及ぶ例が時々報告される。小型船で高馬力の主機を備えた遠洋の引船(Ocean tug)では船尾振動による外板の凹入が時折認められるので注意する。


写真4 大馬力の主機を備えた遠洋曳船(Ocean tug)の船尾部の凹損



(7) ノッチ(切欠き、Notch)の部分

 この位置は第1図では表わしていないが一般貨物船ではside stringerのある部分すなわち,第1図では(1)と(2)の間ということになり,撒積貨物船では,(4)で述べたような第6図に示すtopside tankとHopper tankの個所である。ノッチについては以前,脆性破壊の起点となる非常に小さい亀裂をノッチ(切欠き)と呼んだが,構造上の不連続の部分をもノッチと呼び,ここで云うノッチは,後者を指している。この意味で,(5)の船楼端も,一種のノッチである。ドックの中から船側外板を見上げても,何処にノッチがあるかは判らないが,前記(1)と(2)の間,撒積貨物船では上甲板下部と二重底上部を睨むと写真1のような星状の小亀裂が発見されることがある。Side stringerの場合,ノッチに起因する外板の亀裂は、隔壁の近くにあるノッチ部に生じ.貨物艙中央部にあるノッチから外板に亀裂が及ぶ例は稀である。


第8図 ノッチの一例



(8) 艙内肋骨下部

 第一回で取り上げたギリシヤ船の沈没事故の原因は艙内肋骨下端の腐食、亀裂が外板に及んだもので,この種の損傷例は船令が10年以上の一般貨物船では原木の専用船に限らず,発生の頻度が高い。うっかり見過ごしてしまうと貨物艙内に浸水という大事故につながるので,ドックに入り船側外板を眺めるときは,肋骨下端に相当する部分を熟視し,水平方向に何ヶ所か異常な汚れがあれば要注意である。

(9) Hopper tank 部

 船齢を経た撒積貨物船で、二重底側部の Hopper tank 内の肋板の衰耗による亀裂が外板に及んだ例が報告されている。渠底より Hopper tankを眺め、Hopper side の下部の位置で一定間隔毎に汚れや湿り気が見つかったならば、内部の亀裂が外板に及んだものと考えられる。足場を設けて詳細に調査する必要がある。


8.5.4 腐蝕および衰耗

 船側外板で、腐触し易い部分は云うまでもなく,喫水線附近で,空船や満船時に,空気に触れたり,海水に漬ったりするため,船底外板や,他の船側外板より腐触が早いとされている。しかし,腐触により,喫水線附近の中央部外板に孔が開くような例は,よほどの老令船でない限り絶無であるので心配する必要はない。しかし、船首尾では板厚が薄くなっているので腐食破口が生じている可能性はある。上記を含め,腐蝕,衰耗の起き易い部分を第9図に示す。

第9図 内部からの腐蝕を受け易い個所(何時もじめじめしている個所)
(1)錨鎖庫底部 (2)肋骨下部,二重底側部(特に前後部) (3)隔壁端部 (4)丸窓の下部



(1) 錨鎖庫 (Chain 1ocker) 底部

 錨鎖庫が船側に達している船では,この中に溜った泥やビルジにより,錨鎖庫底部の外板に他よりも甚しい内側からの腐蝕が生じる。船底検査のためドックに入り,錨鎖の検査で錨鎖庫が空になった時には,錨鎖庫内,特にビルジ溜めを充分に掃除し,腐食の状態を調べ、必要に応じてタールエポなどで十分塗装を施しておくことが望ましい。


(2) 艙内肋骨下部の外板

 前記の錨鎖庫底部と同様,船内肋骨の下端部は,ビルジが溜り,かつリンバーセメンなどによって閉囲されているので,湿気が多く,この部分の外板は船体内部より腐食を受ける。船体の中央部では外板が厚いので,腐蝕により孔があくような例はないが,船首尾部では中央部より板厚が薄くなっているので条件は悪くなる。老令船の場合,入渠した際に特に船尾部の肋骨下部の外板をテスト・ハンマーで叩くと,意外に薄くなっていることがある。最近の船は,船尾に機関室が配置されているので内部からの腐食は少ないが,三島型の貨物船など,船尾部にも貨物艙のある船では,注意をするにこしたことはない。


(3) 船首尾肋骨に添った部分の外板

 船首尾部の外板は元来中央部より板厚が薄くなっているので、水線付近の外板も案外衰耗が早く,古い船で,今では珍しくなったが,肋骨と外板の取合いが鋲の場合、肋骨の背に添って板が薄くなり,甚しいときは,テスト・ハンマーの尖った方で叩くと孔があいた例もあった。写真4は19年目の三島型貨物船の例で, Aft peak tankの前の外板が,肋骨の背に添って極度に衰耗しており錆打ちを行ったら穴があいた。機関室の外板が錆だけでもっていた危険な状態であったことになる。


写真 5 機関室部の外板の破口



(4) 窓の下部

 窓は直接鋼板にボルトで取付られており,その周囲は内張で覆われている。従って内外の温度差,窓が開いているときの雨やしぶきの浸入などにより,窓の下の外板は内側から腐蝕を受け易い。早い場合は船令8年ぐらいから腐食の徴候が現れるので,古い船では念のため板厚を測っておくとよい。


写真6 窓の下が腐食しているとは思えない



写真7 内張板を外した状態
食はかなり進行しており外板は錆と塗装でもっていたことが分かる



8.5.5 設計、工事不良による外板の亀裂

(1) 断切する補強材

部分的な板の補強として、外板補強材 (Shell stiffener) を取付ける場合がある。これは新造の時にも採用されている。第10図は船首船底の補強のために肋板の間に設けられたもので、補強材の端部から直接外板に生じた亀裂である。手間が掛かるが補強材の端部はスニップせずに肋板に取り付け断切させないほうが良い。


第10図 補強材端部に生じた外板の亀裂
(a) 船底の例
(b) 補強材(Shell stiffener)の端部をスニップするのは良くない
(c) スニップせず肋板に取付ける



(2) 目違いから派生した外板の亀裂

 一線上に配置されなければならない部材が誤った工事で位置がずれている状態を目違い(Mis-allignment)と呼んでいるが、目違いによって生じる亀裂は多数報告されている。第12図に目違いによって生じた内部部材の亀裂が成長して外板に及ぶ例を示す。


第11図 目違い



第12図 目違いによる亀裂
(なお、目違いはなくとも、短く切りすぎた部材を隙間のあるまま無理して溶接すると、隅肉溶接が切れて亀裂が外板に及ぶことがある。



第13図 隙間があるのに無理をした溶接
隙間 (Gap)の許容範囲 に就いては別途取り上げることとする。




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