26.錨鎖一般(2)


I. 船体損傷に関する一般的な事柄


2.2 錨鎖(Anchor chain cable)

2.2.3 電接鎖の製造方法

 現在,最も多く使用されている,電接鎖のうち,フラッシバット溶接鎖の製造法を少し詳しく取り上げることとする。フラッシバット溶接により,錨鎖を製造する方法は,50数年前,スウェーデンのAseasvets杜によって開発され,多くの改良を経て,今日に至ったものである。この溶接装置は,最低4名の作業者によって,流れ作業により,なかば自動的に,最大径150个阿蕕い泙任良添燭製造できる大変すぐれた装置で,日本の錨鎖製造者は,すべて,この種の溶接機を有している。製造方法は,第1図に示すとおりで,まず製造される錨鎖の径に応じた直径の丸棒を,一定の長さに,切断する。丸捧は,錨鎖の径により1〜3m太いものが使用される。切断された丸棒は,電極の間に挾まれ,通電され,加熱される。これが,準備段階である。次に,フラッシバットの溶接装置にかけられることになる。この装置は,4段階の工程に分けられており, 骨が4本の大きな布の張ってない雨傘のような形をしており,柄に相当する部分が回転し,作業は,十字形をした4本の骨の下で行われる。まず,赤熱した丸棒が,(1)の場所で,ロ一ラにかけられて,(1)に示すように,順次鎖環の形に曲げられる。続いて,傘は90度回転し,曲げられた鎖環は,この装置の本命であるフラッシバット溶接機の所(2)に移され第2段階に入る。曲げられた丸棒の接触面の両端が電極に挟まれる。接触面を両端から軽く押しつけ,電流を通すと,抵抗熱により,接触面の温度が上昇し,最終的に,溶融点に達し,その過程で火花が飛び散り,何百本,何千本の線香花火が同時に火花を出したような状態になる。接触面が完全に溶融点に達した時に,接触面への圧力を増し,電流を切ると,溶融部は,外に圧し出され,蛇が蛙を飲み込んだような格好で,溶接鎖環が出来上がる。傘はさらに90°回転し,第三段階(3)に移る。ここでは,エアーハンマーにより脹れた部分がハツリ取られる。傘はさらに90度回転し,最終過程として,スタッドが取り付けられる。スタッドは,あらかじめ規定の寸法に製造されており,鎖環の間に挾まれ,両端から押しつけられ,まだ,完全に冷却していない鎖環に喰い込んで,鎖環が1個完成することになる。
 傘はさらに90度回転し、旧位置に戻ると,そこで,次の赤熱された丸棒が,鎖環の間に入れられて,第一段階で行われたと同様な方法で,鎖環の形に曲げられ,以下,同じ過程で二番目の鎖環が完成し,順次,鎖は鎖環の数を増していく。見ていると,四本の傘の骨の下で,それぞれの作業が連続して行われていることになり,同時に,4連の鎖が製造される仕組みになっている。なお、曲げる前の丸棒の加熱は,前記の電気抵抗熱による方法と,重油の炉に入れて加熱する方法がある。この製造法による錨鎖の長短としては,次のことがあげられる。

(1) 長所
  1. 溶接部の強度は母材の丸棒と同等以上である。
  2. 鍛接鎖のように勘に頼る度合が少なく,均一な製品が期待出来る。
  3. 溶接による熱影響部が少ない。
(2) 短所
  1. 強度は使用される丸棒によって限定される。
  2. スタッドは,写真1のように,単に鎖環に挾んであるだけなので.小径の錨鎖では喰い込み量が少なくスタッドが,緩みやすい。
  3. 鋳鋼鎖と比べ,材料の丸棒が圧延材であるのため軟く,摩耗も多く,使用頻度によっては,寿命が短い。
 以上,電接鎖の製造法を述べたが,このほかに,シャックル,スィベルの製造法も述べるべきであるが,標題の,「船体の泣きどころ」からは,あまりにも逸脱してしまっているので省略する。


写真2 特殊なケンターシャックル
※画像をクリックすると拡大します



写真1図 溶接中の鎖環、第1図(2)の位置参照
(浜中製鎖蠅離タログより)



写真2 電接鎖の切断面
スタッドは嵌込んであるだけ。スタッドの上の白い線の様に見えるのが溶接部。


2.2.4 錨鎖の検査

 錨の場合も同様であるが,船舶用の錨鎖を製造するときには,あらかじめ,船級協会の認定を受けておくことが必要である。このためには数多くの試験と品質管理体制の調査を受け,これに合格する必要がある。前に述べたような機械を備え,技術者を集めただけでは,そこで製造された錨鎖は,NK,AB,LRなどの船に使用することはできない。認定を受けた工場で製造された錨鎖が,本船に搭載されるまでに,個々の錨鎖に対し,どのような検査を.経て来ているかを,第2種電接鎖を例に取り,眺めてみることとする。

2.2.4.1 材料の確認

錨鎖の製造に先立って使用される材料が規格に合ったものかどうかの確認が行われる。鉄鋼メーカーで,検査員が材料の試験に立ち会って,それに合格した材料が,錨鎖の製造者に納入される例が殆どで,この時は,その材料の証明書(ミルシートと呼ばれる)と,棒が同一のものであることを,丸棒の端部に打ってある刻印によって照合すればよい。そうでない場合は,使用される丸棒の一部を切り取って,材料試験片を削り出し,強度試験と,化学分析による成分の検査が必要となる。これにより,不良材は排除されることになり,品質の良い錨鎖が製造される。

第2図 錨鎖用丸棒のミルシート


2.2.4,2 切断試験

 素性のはっきりした材料を使用して,錨鎖を製造すると前記のように,4連が同時に出来上る。この4連の中の一連から第3図のように任意に3リンクを抜き取り,これを試験機にかけて引張る。この荷重は,錨鎖の種類と径に応じて,次の式で表わされる。ここで,dは錨鎖の径()である。

第一種  1.0d2(44−0.08d)kg
第二種  1.4d2(44−0.08d)kg
第三種  2.0d2(44−0.08d)kg

すなわち50mの第2種錨鎖では140t,日精丸の場合は1,165tになる。


 このような大きな力を掛けて,4連の代表選手となる3リンクを引張り,この荷重以下で切断すれば不合格になる。実際に切れるときには,何百トンという力が,一瞬にして0になるので,試験機には、ものすごいショックが働き,試験機を痛めるので,普通は,実際に切断するまで引張らず,規定の荷重で切れなければ,切断試験は合格として,そこで引張ることは止める。


第3図 切断試験片の採取
1連の中から任意の3リンクを選び,その両隣りのリンクをガスで切断する。残った鎖は5リンクが不足することになるので同じ製造方法で,この5リンクを補充し,耐力試験が行われる。



第4図 錨鎖の切断位置


 実際に切断してみると,その切断位置は第4図のように錨鎖の肩のところで切れる。これは,鍛接鎖でも,鋳鋼鎖でも同じで,剪断によって切れることになる。もし,本船の錨鎖が切断した場合,切れた位置が,肩のところであれば,錨鎖には,その切断荷重以上の大きな力がかかったためである。もっとも,切断した鎖環は,海没してしまうことが多い。(3)のようなときは,溶接が悪かったためである。
 なお,切断試験で不合格になった場合は,切断試験のための代表選手を切り取った錨鎖の中から,さらに3リンクの切断試験片を2組切り取り,同様な切断試験を行い,2組とも合格しなければ,その錨鎖は廃却される。残りの3連については各々につき切断試験が要求される。電接鎖が実際に切れたときの荷重と,規定の切断試験の荷重とを第5図に示す。


第5図 実際に切断したときの荷重


2.2.4.3 耐力試験

切断試験は,代表選手による試験であるが,耐力試験は,錨鎖1連毎の個別試験である。この試験機は,写真2のように,あらゆる試験機の中で,一番長い試験機で,ふところの長さは30mを超え,錨鎖メーカー以外で,このような試験機を備えている所は聞いていない。この長い試験機によって,錨鎖1連毎に引張り試験が行われることになる。切断試験のために,3リンクを切り取られた(実際は,3リンクの両端のリンクを切ることにたるので,5リンク分が不足している).鎖は,製造されたときと同じ条件で,5リンクが製造され継がれ,完全なものとして,耐力試験にかけられる。この荷重は,次のとおりで,切断試験荷重の約70%の力である。ここでdは錨鎖の径()である。

第一種  0.7d2 (44 − 0.08d) kg
第二種  1.0d2 (44 − 0.08d) kg
第三種  2.0d2 (44 − 0.08d) kg

 錨鎖の1連,1連が,この荷重に耐えなければならないことは勿論であるが,試験後,各鎖環に変杉,傷などの欠陥が生じてはならない。このため,試験後,錨鎖を並べ,中腰になり,ライトとテストハンマー,パス,スケールを手にして,端から端まで,蟹の横ばいよろしく,一個一個の鎖環を睨んで歩き,次に鎖をひっくり返して,裏側になっていた面を上にして,同様に端から端まで調べなけれぱならたい。結局,1連27.5mとして,1本を調べるのに55m,中腰の横ばいをせねばならず,20連もあれぱ1劼睚發ことになり,眼は疲れ,足腰はガクガクになり,検査員泣かせの検査の一つである。
 もし,耐力試験において鎖環が切れたり,溶部が口をあいたような時,このような不良の鎖環が全体の半数以上であれば,その錨鎖は廃却され,半数以内であれば,欠陥の生じた鎖環取り替えて,1回だけ再試験が許される。


写真3 錨鎖の耐力試験
(浜中製鎖蠅離タログより)


2.2.4.4 寸法および重量計測

 鎖環の1個1個の長さ,幅,径は,耐力試験後,変形,傷の有無を調べる際に適宜行われ,許容範囲内に入っていることが確認される。径は,製造時の加熱,曲げなどにより減少することがあるので,使用される丸棒は鎖の径より,何ミリか太いものが使用されており,この許容差は第6図のようになっている。したがって110个良添燭任論渋せの径は109〜114の範囲のものがあることになる。


第6図 錨鎖の径の許容差


 あまり錨鎖を使用しない船で,新造後4年目の定期検査で,錨鎖の径を計測すると,たとえば60个虜燭任△襪呂困覆里62个阿蕕い△,4年間に2个眤世辰燭茲Δ心兇犬することがある。これは,製造時に62mmの径の丸棒が使用されており,4年間,殆ど摩耗しなかったためである。
 前記各試験後,錨鎖の全長と重量の計測が行われる。もっとも,錨鎖の長さの測定は非常に困難で,正確に測ることは不可能に近い。何故ならば,真直ぐに伸しただけでは,鎖環の間に,たるみによる隙間があり,短かめに計測される。クレーンなどで吊り下げた状態で測ると,自重による伸びが加算されてしまう。このため,試験機にかけて,耐力試験荷重の1/3の荷重がかかったときに,一時,引張りを止めて,巻尺で測って全長とするのが普通である。1/3の荷重でも,太い鎖では自重で中部が撓んでおり,正確な長さは分からない。重量は径によって決り,種別には無関係である。1m当りの重量は,次式のとおりで,これは,標準の値になっており、重量不足で不合格になることは,殆どない。

0.0219 d 2 (kg)

 上記の,各試験、検査に合格して,初めて完成品として船に搭載されることになる。また,シャックル,スイベルについても,錨鎖と同様な試験、検査が行われる。
 しかし,切断試験は,省略ができるようになった。これは、鎖より寸法が大きく,切断試験を行っても,若千の変形こそすれ,切れる例がないこと,1個のスイベルを作るために,切断試験用として,もう1個作らねばならず不経済であるためと考えられる。なお,試験,検査に合格した錨鎖は、第7図のように両端の鎖環に,耐力試験荷重,切断試験荷重さらに船級協会の合格を示す刻印と,検査をした検査員の番号が打刻されているので,新しいうちは,誰が何時,何処で検査を行い,その切断試験荷重,耐力試験荷重は何トンであったかも判るようになっている。


第7図 錨鎖の端末鎖環およびシャックルの刻印
新しいうちは,検査に合格したことを示す刻印が見られる。兇脇鷦錙↓靴六絢錣鮗┐掘NKは船級協会のマーク143は検査員の番号、Ⓣは検査員の所属支部を示す。下のBLは(Breaking load)切断荷重で135tで引張って切れなかったことを示し.PLは(Proof load)耐力荷重を示す。




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