33.甲板(6)


I. 船体損傷に関する一般的な事柄


3 甲板(Deck)その6

3.3.2.3 最上層甲板の座屈

 柱の一端を固定し,他端に,柱の軸方向に圧縮荷重を加える。荷重を徐々に増していくと,柱は遂に荷重に耐え切れず腰を折ってしまう。艙内の柱の他に,この圧縮荷重をまともに受ける典型的なものは,揚貨装置のデリックブームで,ブームは,吊り下げる貨物の荷重の分力としての圧縮荷重を基にして設計されている。


第1図 Derrick boomには吊った貨物の重量の分力が軸力として働く


 従ってブームは横からの曲げ荷重に対しては非常に弱いことになる。荷役中,ブームが邪魔物に当たると,すぐ曲がってしまうのはこのためである。板の座屈も,柱と同様に,例えば,短形板の相対する辺を圧し,徐々に力を増していくと,始めのうち板は変形せずそのままの形で平面内で僅かな変形をするが,荷重が大きくなり,ある限度に達すると,板は,平面を保つことができなくなり,波を打ったような形になる。この状態が板の圧縮座屈と呼ばれるものである。柱と違う点は,波を打った状態の荷重,すなわち,座屈荷重は,板の厚さの他に短形板の長辺と短辺の長さの比や,各辺の固定状態により,いろいろの値をとることと,現象面として,柱の場合,座屈で腰が折れると,それ以上の荷重には耐えられなくなるのに対し,一般に,板では,座屈荷重以上の力を加えても,波を打った状態である程度まで,増加した荷重に耐えることである。


第2図 甲板の座屈
横置梁(Transverse beam)構造の甲板は縦置梁(Longitudinal beam)
構造の甲板と比べ座屈に対して弱い


 上甲板は,既に述べたように,船体中央部の貨物艙に重い貨物を満載し,前後部を空艙に近い状態にすると,サギングになり,船底には引張りの力が働き,上甲板側には圧縮荷重が働くことになる。


第3図 サッギング状態で船体に働く力
上甲板は圧縮荷重を受け,船底は引張りの荷重が働く。圧縮も引張りもかからない面を中性軸と呼ぶ。冷蔵運搬船の下層甲板は,丁度この中性軸付近に位置しているので,前述のように甲板に亀裂が生じても縦強度上の心配は少ない。


 もし,上甲板が,この圧縮荷重に耐えられなければ,甲板は波を打ち,座屈することになる。最近の船は,上甲板は縦通梁構造になっており,鋼甲板を支える梁は,船の長さ方向に配置されているので,甲板に圧縮荷重が加わっても,その荷重は,鋼甲板と縦通梁によって支えられ,座屈に対する強度は,横置梁構造の船と比べ,格段に強く,座屈は起こらないと考えて良い。古い船で,上甲板の梁が,横方向に配置されている船では,梁は,甲板の圧縮荷重を負担せず,鋼甲板のみが圧縮荷重に対抗することになり,甲板の板厚が薄い場合は,座屈により甲板が波を打つことになる。普通,長さが60m程度以下の船では,上甲板が横置梁構造になっていても,サギングによる上甲板の圧縮荷重は小さいので問題にならないが,大きな船では次のような報告もあり,現在の新造船では,上甲板を横置梁構造とした場合は,設計時に座屈強度の検討が行われ,弱い場合は,長さ方向にカーリングを設けることが要求されている。
 M丸は,1961年に建造された長さ約140m,幅18.90m,深さ12.10m,喫水9.20, 9,000総トンの冷蔵運搬船で,上甲板は横置梁が採用され,上甲板の板厚は16个任△襦ところが,1980年頃から,船体中央部付近で,甲板に波が打っているのが発見され,梁と梁との間で,凹入,または突出している量は約20mmに達するようになり,積荷の状態により,歪の量が減ったり,位置が変わったりすることが分った。これは,船令が古くなったため上甲板の板厚が衰耗して薄くなったことと,横置梁であるためによる上甲板の座屈で,1982年度の入渠時に,衰耗した部分の甲板は切り替えられ,座屈防止用の補強として,長さ方向に4条のカーリングが設けられた。前に,上甲板の亀裂のところで,横方向に大きく亀裂を生じたときには,船体がなるべくサギングになるように積荷や,バラストを調整し,亀裂を進展させるような甲板の引張りを少なくする処置が必要であると述べたが,上甲板が横置梁構造になっている船では,極端なサギング状態を作ると,逆に,甲板が座屈する恐れがある。しかし,板の場合は座屈して波を生じても,直ちに破壊することはなく,実際例としての座屈の報告も非常に稀であり,座屈により船の安全性大きく損なわれることはないので、あまり心配することはない。同じ座屈の現象は,ホギング時の船底外板にも見られ,船底の項で簡単に取上げたように,船底外板では,座屈により,板が波を打ち,ペコペコしている間に塗装が割れ,海水が塗料の割れ目から浸み込んで,外板を局部的に腐蝕させ,ひいては,亀裂につながることがあるので,上甲板の座屈よりはたちが悪い。

3.3.2.4 貨物による甲坂の垂下

 波浪の打込みによる損傷に続き,貨物の荷重による甲板の垂下を取り上げることとする。波浪については,昔と比べれば大分実態が判ってきていることは事実であるが,結局は,まだ完全には判らないということになる。この点で,貨物の荷重は,何トンとはっきりしており,甲板の垂下は,重い貨物の積みすぎ,積付け不良,老令船における甲板各部の衰耗による強度低下が原因である。
 話はそれるが、昭和31年11月,東海道線が全線電化して以来,SLは年々姿を消し,現在,客車を曳きドラフトを響かせて疾走するSLは姿を消してしまった。JRの場合、特定の路線で特定の期間に興行的に運転される例が殆どとなっている。


写真1 東海道電化完成記念のピース
戦前は東海道線でも、東京から国府津ぐらいまでしか電化されておらず、それから先は蒸気機関車が牽引していた。


 国鉄山口線の小郡から津和野までの62.9,はC-57,C-58が使用され,時速約50,私鉄では,大井川鉄道の金谷,千頭問の39.5,でC-11,C-56が活躍、其の他では、磐越西線、真岡線等となってしまっている。しかし,SLブームは一向に衰えず,中国,インド,南アなどまで足を伸ばして,蒸気機関車を追いかける人も居るほどである。


写真2 大井川鉄道で活躍している蒸気機関車
C5644は、戦時中タイ国に送られ現地で稼動していた機関車で、昭和54年タイ国政府の好意により返還された2輌の中の1輌である。序でながら、C56は写真中のC12型の後輪を廃止してテンダーを取付けた機関車である。


 デゴイチの名で知られる昔なつかしいD-51の場合,炭水車を含めて重量は125.8tあり,橋脚や道床が弱く,枕木の少ない3級路線,4級路線を走ると橋脚がもたなかったり,線路が傷んでしまい,2級以上の線路でないと走れないことになっていた。一方,蒸気機関車より重量の軽い電気機関車のED-75では,重量は67.2tで,D-51の半分であるが,逆に速力が速いので,D-51と同様に1級,2級の線路でないと使えないことになっている。道路の場合も,日本では自動車の輪荷重は最大5tと決められており,海上コンテナを運ぶセミートレーラーは,車両制限令により総重量が,高速道路では34t,一般の道路では27tと定められている。車両の軸荷重が10tの場合の道路損傷率を1とすれば,軸荷重が15tに増えると損傷率は5倍になるといわれている。
 船の甲板も,重い貨物を積むと,甲板が傷み,垂れ下ったり,陥没したりする。ただ,船の甲板は,鉄道線路や,道路のように強度上の制限がはっきりしないので都合が悪い。もっとも,甲板の強度に等級をつけ,この甲板は1級甲板だから何百トンもの貨物が積めるのだと得意になり,やたらに甲板上に貨物を積むと,甲板はびくともしないが,船の重心が上がって転覆してしまうはめになる。こう考えると,船を運航することは実に難しいものだと思う。鉄道車両,自動車,航空機などに比べ,最も運航の難しいのは船であろう。燃料100t以上も積み,離陸時の最大総重量(Take-off weight)340tといわれるジャンボジェットのBe 747の場合、離陸前に重量の配分,重心位置は正確に計算されており,天侯が悪いと欠航ということになる。船は,多少変な貨物の積付けをしても沈むことはたく,大洋の真中で荒天に遭遇しても航行を続けなければならない。乗組みの方々の苦労は本当に大変なことと思う。さて,余計なことが長くなったので,甲板の泣きどころに戻ることとする。


写真3 D-51 蒸気機関車



写真4 ED-75 交流電気機関車


(1) 下層甲板の強度

 甲板は,さきに取り上げたように,鋼甲板 (Deck p1ate) と梁 (Beam) および、これを支える桁 (Girder) から成っており,甲板上の貨物は鋼甲板,次いでこの甲板は梁によって支えられ,梁は桁と外板とで支持され,最終的に桁を支えるものとして.柱 (Pi11ar) や隔壁 (Bu1khead) 、外板が控えている。下層甲板の鋼甲板は,船体の縦強度に幾分寄与するが,暴露甲板以外では必ずしも必要ではなく,梁と桁だけにして,必要に応じて,梁の上に木板を並べただけの甲板もある。この意味で,一般に甲板の強度は,梁と桁との強度であるといっても良い。波浪による荷重を受ける暴露甲板については,既に取り上げたが,貨物を載せる目的で設計されている下層甲板の設計荷重は,鋼船規則では,甲板からその直上の甲板までの高さに0.7を掛けた値が取られている。すなわち,甲板間の高さが2mの船では次のとおり,1平方メートル当り1.4tの荷重に耐えるよう,鋼板,梁,桁,柱の寸法が定められている。
 2.0×0.7 = 1.4(t/)従って,甲板間の船側における高さhとすると,その甲板は0.7h(t/)の荷重に耐えられることになる。ただし,自動車など特に軽い貨物のみを積む自動車専用船では,予定される特定の自動車の輪荷重にのみ耐えるように設計されている。この場合は,乗用車を目的として設計された甲板に重量の大きいダンプトラックなどを積むと甲板が撓み垂下することになる。
 自動車以外でも特に軽い貨物しか積まない船では、(0.7h)より少ない荷重で設計されており、これらの場合の甲板荷重は、その値がローディング・マニュアルまたは中央断面図に記載されている。逆に、特に重い貨物を積む目的で、(0.7h)より大きい荷重で設計されている船もある。


第4図 下層甲板に許容される荷重
甲板間の高さが3m, 許容荷重2.1t/m2として設計された第二甲板に各種の貨物を等分布になるように積んだ場合の積付け高さ。
Stowage factorが50以上の貨物(例えば,小麦,大豆,石炭,木材,綿花,羊毛,箱入り酒類など)は甲板上一杯まで積んでも問題はない。


 許容される甲板荷重について中央断面図などに特に記入のない船では、0.7h(t/)と考えてよい。甲板間の高さが3mの場合,荷重は 3 × 0.7 = 2.1 (t/) ということになり、結局、比重0.7 の貨物を等分布の状態で上のデッキの裏まで隙間なく積めることになる。若し、比重の大きい貨物、例えば比重3の貨物を積むとすれば、この船の場合、2.1 ÷ 3 = 0.7 即ち、70cmの高さまでしか積めないことになる。もっとも、梁や桁の設計に際しては、動揺による加速度、甲板に貨物を落としたときの衝撃などを考慮した安全率が含まれているので、比重3 の貨物を 1m の高さまで均等に積んでも、よほどの老齢船でない限り、直ちに甲板が垂下するようなことはない。

(2) 貨物の積み方

 上記のように、貨物の重量は甲板に均等に加わるものとして強度が決められている。同じ大きさで、同じ重さのカートンを沢山積むときや,小麦,大豆などの殻類,石炭などの撤積貨物では、甲板に均等に積むことが出来るかも知れないが,実際の貨物では,等分布荷重になるように積めるものは少ないと考えられ,ある部分には鋼材,ある部分には雑貨といった状態になる。またコンテナでは,その重量は,底部四隅にある鋳鋼製の隅金具にのみ加わることになりコンテナの種類によって第1表のような集中荷重が甲板に局部的に作用する。コンテナ積みとして設計されていない在来の一般貨物船でハッチカバーの上にコンテナ積み,ハッチヵバーを凹入させてしまった例が時折り報告されるが,集中荷重になる貨物はダンネージなどを配置して,極力,分布荷重に近い状態で積むことが望ましい。
コンテナの底面を見ることは普通には出来ないが、底面は第5〜7図のようになっている。


第1表 コンテナの寸法
※クリックすると拡大します。



第5図 コンテナの床面(1)Goose neckを有する40’コンテナ



写真5 上記コンテナの床面、こんテナーは横倒しにされている



第6図 コンテナの床面(2)20’コンテナ



写真6 上記コンテナの床面、コンテナは立てられている



第7図 コンテナの床面(3)20’タンクコンテナ



写真7 上記コンテナの床面、コンテナは立てられている


 簡単のために、甲板を外板と艙口側桁 (Hatch side girder) とで単純支持された梁と考え、その上に加わる貨物の荷重による剪断力と曲げモーメント、撓みの量を、等分布荷重のときを1とし、同じ重量貨物を集中荷重として梁の中央に積んだ場合、分布荷重として中央部のみ、または、端部に振り分けて積んだ場合などの比率を便覧によって計算してみた。(第2表)


第2表 両端支持の梁に同じ荷重が加わったときの梁に働く剪断(F)
曲げモーメント(M),撓みの比較


 これによると、同じ重量の貨物でも、中央に集中して積むと梁に働くモーメントは、2倍になり、撓みは 1.6倍になることが分かる。つまり、梁には設計時の2倍の応力が働くことになる。この貨物を、梁の長さの4分の1 のところに二つに分けて積み変えると、曲げモーメントは半分になる。
 また、集中荷重になる貨物を積むときは梁の両端を支持と考えた場合、梁の支点、即ち、外板側か艙口の近くに積んだ方が梁に働くモーメントは小さくなる。但し、梁の端部の剪断は大きくなる。
 結論として、甲板を傷めないためには、貨物は出来るだけ等分布荷重になるよう積むことである。
 なお、甲板の構造の項で触れなかったが、荷役の邪魔になる艙内の柱を廃止した船も多く建造されておりこの種の船の甲板は第8図のように日曜大工で取り付ける棚のような片持梁 (Canti1ever )構造になっている。片持梁で支持され,艙内に柱がなくても,甲板の強度は0.7hの荷重の等分布荷重で設計されていることには変わりはない。この場合も,集中荷重になるような重い貨物は面倒でも片持梁の固定端、即ち、外板側に積んだ方が甲板にとっては強度上楽になる。下層甲板の垂下の例は、片持梁構造で艙内に柱のない船の方が圧倒的に多い。


第8図 片持梁構造の甲板


(3) コンテナは集中荷重である

 コンテナは四角い箱なので、段ボールの箱の様に荷重は底面全体で受け持ち等分布荷重と考えられ易い。しかし、これは大間違いで実際は第6図で示す様にコンテナの四隅にある隅金具 (Corner fitting又は, Corner casting)で支持される集中荷重である。


第9図 コンテナの8個の隅金具
コンテナの床構造は隅金具下面から 12.5(+5,−1.5)仍ち上がっている



第10図 隅金具
この面(245cm2)に5〜7.6tの荷重が掛かる


 したがって,例えば,40フィートコンテナ (1A,1AA) では,最大総重量になるように貨物を詰めたとき,重量は30.48tとなり,甲板やハッチカバー上に積んだ場合,隅金具1個には,その4分の1の,7.62tの集中荷重が掛かることになる。これが2段積みされると7.62×2 = 15.24tとなり,新造時にコンテナ積みとして,隅金具下部にあたる部分の甲板や,ハッチカバーが補強されていないと,甲板やハッチカバーを垂下させる原因となる。
 コンテナがトレーラーなどで陸上輸送される場合,トレーラーのシャーシーは,その強度上,隅金具の位置のみでコンテナの重量が支えられないものがある。このためシャーシーは,隅金具ではなく,コンテナの床構造部材で全体の重量を支えることになる。このため,コンテナの床構造には,荷重伝達面 (Load transferring area) が設けられている。


第11図 荷重伝達面
※クリックすると拡大します
コンテナをトレーラーに載せるときは図の黒で塗りつぶした個所がシャーシーのフレームに乗る


 これは,コンテナの幅の中心から,左右350侘イ譴晋捗蠅250个良になるよう定められている。隅金具の下面から,この荷重伝達面までの高さは12.5 (+5、−1.5)个筏定されているので,コンテナ積のために補強されていない甲板やハッチカバーの上に止むを得ずコンテナを積む場合は,その重量にもよるが,厚さが17.5舒幣,幅250舒幣紊猟垢ず太を2本用意し,第12図のように,根太の上に積めば,隅金具は,甲板またはハッチカバー上から浮き上がり,コンテナの重量は,根太を介して,長さ方向では分布荷重になるので,甲板,ハッチカバーにかかる力はかなり楽になる。


第12図 コンテナの積み方
こ荷重伝達面に相当する個所に図のようなダンネージを敷きその上にコンテナを載せラッシングする




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