41.貨物艙(6)


I. 船体損傷に関する一般的な事柄


4 貨物艙(Hold) その6

4.4 肋骨以外の艙内の泣きどころ

4.4.1.3 隔壁の際 (きわ)
 貨物艙の前後端にある隔壁の際(隔壁の前後約300个糧楼)は,隔壁に添った上下方向の亀裂が生じることがある。勿論、亀裂が発生する前には,この部分は薄くなっている訳で,これは普通老令船の場合,外板の局部的衰耗によるものであるが,比較的船令の若い船で,衰耗の少ない状態でも,まれに亀裂が生じることがある。この部分は,多くの場合,二重底タンクの空気管や、ビルジ測深管等が立ち上がっており、これが邪魔になって異常の早期発見がなおざりになる個所である。(第1図 〇仮函墨稽霑イ任漏嵎漂櫃粒鞍弔糧銚を測定しておくとよい。


写真1 隔壁の際に生じた亀裂が…
パイプの陰で見落とし易い



第1図 貨物艙の隅のチェックポイント


4.4.1.4 船側縦桁 (Side stringer)の部分
上下方向に長い肋骨の中央を支えるため,また一番艙では,外板を叩きつける波に対抗するため,船側縦桁(Side stringer)が設けられる場合がある。ところが,往々にして,このSide stringerが頑張りすぎてか,外板亀裂の原因となることがある。 Stringerの亀裂は,第2図のように、stringerの前後端,すなわち,貨物艙の前後端に発生することが多く起点は肋骨が貫通するStringerの切欠き(notch)部である。stringerの亀裂が進展し,webからface p1ateに達し,stringerが完全に切断してしまうと,肋骨は支えを失い,外板に亀裂が生じることになる。また,これとは逆に,Stringerの端部についているブラケットの個所でface p1ateが切れ,次にwebに亀裂が入り,これが外板側に進行して第3図のように遂には外板の亀裂につながることもある。貨物艙にside stringerがあるときは,まず端部をじっくり眺め,順次、他端に目を移し,他端部を再び熟視して特に変な汚れがなければ,今度は反対舷のStringerに目を移し同じことを繰り返すことになる。               


第2図 Side stringer の亀裂の生じ易い個所 (○で囲んだ部分)



第3図 Side stringer端部の亀裂の進展 (webの亀裂が原因)



第4図 Side stringer端部の亀裂の進展 (Face plateの亀裂が原因)



第5図 Side stringer のチェックポイント
Side stringer の端部や肋骨貫通ノッチ部は要注意
 ヽ鞍弔竜砧 (ノッチの部分)
◆Webの亀裂 (ノッチの部分)
 Stringer 端部のWeb の亀裂 
(亀裂はパイプ貫通の孔から発生することもある)
ぁヽ嵎票莵腓ど瑤竜砧
ァFace plate の亀裂



第5図 Side stringer 前端部の検査
一番艙前端部には船首槽 (Fore peak tank)内の水平桁のブラケット が同じ位置にあり、前後で目違いがあったりすると Stringer 端部に亀裂が生じていることがある。この場合は船首槽から浸水しているので分かり易い。


4.4.2 二重底頂板 (Tank top)
 内底板は,艙内に積む貨物の種類により傷みかたが違う。雑貨を専用に積む船ではほとんど損傷は生じないが、原木、鋼材、鉱石などを積む船では,荷役中の貨物の落下、ブルドーザーやフォークリフトなど運搬機器の使用により,凹入したり,孔があいたりする、また塩や特定地区の銅鉱石の撒積み,原木の積載などを続けろと,腐蝕がひどくなる。このため,規則では,特に重い貨物を積んだり艙内でブルドーザーなどを使用することが多い船では、艙内敷板が傷むので省略が認められている。この場合には,内底板の板厚を増さねばならないことになっている。二重底頂板の泣きどころには,次のようなものがある。

4.4.2.1 艙内敷板 (Bottom ceiling)
二重底頂板に板を張りつめている船では,敷板が破損していたり,部分的に汚れたところがないか眺めてみよう。空艙の場含,艙口が開いていれば,わざわざ艙内に入らなくても,上から見れば,大体の見当はつく。敷板が著しく破損している場合,その部分の敷板を外すと,内底板に亀裂が生じていたり,甚だしく凹損しているのが発見されることがある。敷板が濡れていたり,油で汚れている場合は,二重底頂板の亀裂,または破口から,タンク内のバラスト,あるいは油が漏れた疑いがあり,この場合も,その部分の敷板を外して調べることが望ましい。これに気がつかず,雑貨を積み,貨物を汚すことがある。敷板を設けていない船では,荷役による損傷は一目瞭然である、判りきったことであるが,揚げ荷が終わり,空艙になったときは,艙内の状態を確めておくのが常識である。


写真2 艙内敷板 (Bottom ceiling) を外した状態
本船は単底構造の船である


4.4.2.2 二重頂板の腐蝕
老令船では,二重底頂板の腐触例が多く,比較的新しい船でも,貨物の種類によっては,かなりひどい点蝕が生じていることがある。部分的にでも,艙内の敷板を外すことがあったら,腐蝕の状態を調べておくと良い。この部分の錆は,テストハンマーで叩くと容易に取れ,錆を落とした後の鋼板の表面は案外状態が良いように見えるので騙されやすい。実は,容易に取れる厚い錆の下に,もう一層硬い錆が生じていることが多く,これはテストハンマーの尖った方で,腕が疲れるほど気長に叩かないと取り除くことができない。これを落とすと,どこかのバーの可愛子ちゃんのように,やっと鉄色の鋼の地肌が現われ,アバタ状の肌荒れのひどいのに喫驚することがある。この腐蝕は,二重底頂板のほかに,ビルジ部の縁板にも派手なものがあり,破口が生じている例も珍しくない。(第1図参照) タンク頂上板を全面的にテストハンマーで叩く訳にはいかないので定期検査ではタンクに水をはり水頭を掛けて漏水を調べることになっている。老齢船で定期検査の時に、二重底タンクの水圧試験を行ったところ頂いたの腐食破口から水が噴水のように噴出したことがあった。


第6図 二重底タンクの水圧試験
タンク頂版に穴があいていると水圧試験の時に噴水のように穴から水が吹き出る。


4.4.2.3パイプの立上り
貨物艙内に設けられるパイプのうち,主なものは,ビルジの測深管 (Bi1ge sounding pipe),二重底タンクの測深管と空気管(Air pipe)および,隣の貨物艙のビルジ吸引管(Bilge suction pipe)・・・・・・これは二重底タンク内に配管されていることもある。・・・・・・これらの中で,二重底タンクの測深管と空気管は破損したり,腐蝕により孔があくと,二重底タンクのバラストまたは油が艙内に漏れて,貨物を汚すことがある。特にタンク頂板からの立上の部分は木材で保護されていても,貨物が当たったり,ブルドーザーで引掛けたりして亀裂が生じる。また,パイプの曲りの部分で肉の薄いところに腐蝕破口が生じていることがある。(第1図∋仮) 艙内のビルジ測深管は,押しつぶされない限り,少々破損しても実害はない。ビルジ吸引管は艙内を通っている場合は,普通リンバーボードの下を通っているので,損傷はほとんどなく,腐触も割合に少ないようである。以上が一般貨物船の艙内の一般的な泣きどころである。





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