43.機関室 (Engine room) 其の2


5. 機関室 (その2)

  5.2.4 Cofferdam

   5.2.4.1 酸欠に注意

 Cofferdamに入る前に最も重要なことは、内部が酸欠状態になっていないことの確認である。以前、二機二軸のTug boatの定期検査のときのことである。この様な船の機関室のCofferdamは縦横複雑な配置になっている。身をよじらせてパイプの間にあるCofferdamのガットから中にはいる。覗くとひどい錆で酸欠状態であろうことがピーンときた。頭を突っ込むと、フーツと貧血になったような感じがした。やはり、酸欠のようだ。すぐ頭を外に出し、深呼吸をして、再び同じことをすると、また、頭がフラツとなった。酸欠であることは間違いない。内部検査は即座に中止した。後で、酸素濃度を測ってもらったら、18%であった。Cofferdamに限らず、錆が多量に生じている所では、酸欠に充分注意せねばならない。以前、原木を満載したHo1dに入ったことがあったが、酸素濃度は事前に測定しなかった。幸いに、酸欠状態では無かったので、事なきをえたが木材、スクラップ、チップ等を満載したHo1dでも、酸欠の危険はある。事前の酸素濃度のチェックは絶対に欠かしてはならない。


第1図 2機2軸船の機関室タンク配置例


写真1 写真2
酸素濃度計(理研計器) 酸素濃度計(光明理科学)

       
   5.2.4.2 内部に水や油が入っている時

 Cofferdamに水や油が入っていることがある。機関室のビルジをほうりこんだためと言われることが多いが、疑わしいこともある。Cofferdamのビルジを引くときに逆流させたか、Cofferdam 内を貫通しているパイプに孔が開いていて、ビルジが入り込んだ可能性もある。また、CofferdamのTopに破口があり、ビルジが入り込んだ可能性もある。これらのパイプに穴があいていると、なにかのはずみで、Cofferdamに浸水した時、パイプを通して例えば潤滑油タンクに海水が混入し、航行不能になることもある



第2図 Cofferdam内の配管例
タンクの測深管@や空気管Aが図の様に配管されているとこれらの管に腐食破口が生じた場合Cofferdam内に油が流れ出るし、何かの原因でCofferdam内に海水が浸入すると潤滑油タンクに海水が混入する


   5.2.4.3 主機 Holding down bolt

 主機下のCofferdam には主機を船底に固着するHolding down boltが貫通しているのが普通である。稀に、主機前部にあるボルトが切断してCofferdamに落ちていることがある。
念のため、ボルトの頭をテストハンマーで叩いてみると良い。なお、このボルトはCofferdamに入らなくても床板を外してあるところから下に潜り込み、ボルトをテストハンマーで叩いて緩みを発見することが出来る。叩いたときにハンマーがカーンと跳ね返らないときはボルトが緩んでいることになる。この時には機関担当のSurveyorか機関部の乗組員に連絡する。



写真3 写真4
主機右舷前部のHolding down bolt 主機のHolding down bolt
主機は B&W 6K62EF 左側のボルトは少し緩んでおり油が滲んでいる。
カメラとフラシュをCofferdam内に持ち込んで撮影することは非常に難しい、主機はB&W7K62EF


  5.2.5 其の他

   5.2.5.1 ポンプ類の下


 海水や清水ポンプの下部、締付けBoltが緩んだPipe flange、Va1veの下などでは、常時したたり落ちる水により"点滴石を穿つ"の例のように、Tank topがえぐられ、あばたが生じ、遂には穴があく。穴があけば、機関室のビルジが下の燃料タンクや潤滑油タンクに入りおおごとになる。従って、穴のあく前に点食の状態を調べておく必要がある。昔の様に、定期検査の時にTank topの掃除が完全に行われれば、点食の発見は容易に出来るが、現在ではそうはいかない。代わりの方法として出来ることは、テストハンマーの尖ったほうで、疑わしいPumpの下などのTank topを擦ることである。ハンマーの先にがさがさとした感じがあれば、Tank topには点食がある可能性が強く、手もとの感じで点食の深さも分かる。ひどいと思われるときは、粘土などでせきを作り、その中を掃除してもらい、その部分に二重張を施すことになる。また、老齢船では、Pumpの台が腐食で無くなっていることがある。錆だらけの台をテストハンマーでたたくと、ごそごそとさびが落ちて台が部分的に無くなっており、Pumpが宙に浮いているような状態になっていることがわかる。当然、台を新替えねばならない。この頃の船では見当たらないが、ボイラーが直接Tank topの上に乗っている場合にも、Boiler台が熱によって腐食し、部分的に無くなっている例も珍しくない。


写真5 ポンプの下部
ポンプの下の内底板は腐食しやすい

      

   5.2.5.2 主機下の Well
B&W や MAN 等の主機の下は他の 機関室のTank topより下に下がって凹入している(Well)場合がある。Wellには常時ビルジが溜まっているため、老齢船では腐食破口が生じている例が多い。但し、主機の真下は非常に狭く、軍隊の第三匍匐前進の要領で潜り込まなければ状態は分からない。現在ではこの部分の掃除も滅多に行われないので主機の真下のLODTやLOSTのTank topの腐食状況を確認することは至難の技である。更に腐食破口が発見されても修理工事は狭隘なため非常に困難である。老齢船では主機下のタンクの頂板に穴が空いているに気が付かずに走っている船が結構あるものと推察される。


 
第3図 第三匍匐前進
左右の薬盒を両脇にずらし、銃を両手で捧げ、身を出来るだけ低くし肘と膝とで前進する。昔は中学校の教練の授業で配属将校に鍛えられた


第4図 第5図
 底部が平らな主機の例 底部が突出している主機の例
ビルジは溜まらないので内底板は殆ど腐食しない   ビルジが溜まり内底板は腐食する



第6図 主機 5UEC 45LA を搭載した船の二重底




写真5 UECの主機台 (主機搭載前)
Well の状態、左のマンホールは潤滑油タンクに 入るためのマンホールである


5.2.5.3 船底弁、船外弁、Distance piece

 船底弁、船外弁、Distance piece 等、外板に直接固着されている物があれば、その付近に亀裂がないか、水漏れがないかをも精査しておく。Distance piece取付個所のブラケットに亀裂が生じている例があり、放置しておくと機関室浸水の原因となるからである。

写真6 写真7
 船外弁と肋骨に取り付けられた台弁は検査のために開放されている 開放された船底弁


   5.2.5.4 船外排水弁(Storm valve)

 機関室内や機関室の上の居住区からの汚水を船外に排出するための船外弁は定期検査の際開放検査が要求されている。開放すると、ガスケットが無くなっていたり、自動閉鎖のための鉛の重しが外れていたり、歯ブラシが詰まっていたりすることがある。


写真8 船外排水弁 (Screw down non-return valve)

第7図 船外排水弁の異常


   5.2.5.5 水密戸

 船体中央部に機関室が配置されている船では、機関室と軸室 (Shaft tunnel)との間に遠隔操作で開閉できる水密戸が配置されている。通常は開放されているがこの戸を上下、または左右に操作するための軸の真鍮のコマが磨耗、破損していることがある。これが破損していると上下にスライドする戸の場合、突然戸が落下することがあり、丁度、戸を潜ろうとした人はギロチンで処刑される憂き目に遭うので注意が肝要である。戸の検査では作動試験の外に戸と枠との重なり代を確認しておく。最低10mmラップしていれば問題はない。これが少ない時は調整が必要である。メーカーでは出荷時に35〜40mmに仕上げて出荷している。

写真9 横スライド式水密戸
戸を横に倒した状態
尾道市,山三鋳造


   5.2.5.6 機関室上部

 機関室に下りる途中で、主機の上の方を観察しよう。そこには主機開放の時にシリンダーカバー、ピストンを吊り下げるホイストのレールが取り付けられている。レールは桁や梁に簡単に溶接されているので、稀に、溶接に亀裂が入っていることがある。


   5.2.5.7 蛇足

 検査の際は、機関室の中では、主機、補機の開放、熱交換器の掃除、船底弁の開放、摺り合わせ等色々な作業が行われている。船体担当者の場合、機関のことは関係ないと言う態度は取ってはならない。機関室に入った時には、総てに関心を持ち、分からないことは機関関係の人に聞くなどして勉強すれば、エンジンのことも徐々に分かってくる。写真14〜19に示すようにメタルの焼損、スパークコロージョンなど教材はいくらでもある。


写真10 写真11
クランクメタルの焼損 主機 Main bearing のスパークコロージョン

写真 12 写真13
破損してボスだけになった海水循環ポンプのインペラー   Sulzer 掃気板弁開口部コーナーの亀裂


  
写真 14
写真 15
誤操作により膨出し、陸揚げされた補助コンデンサー タービン船の主機、低圧ローターのシュラウドとブレードの損傷



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