ホームヘルパーと特別養護老人ホーム

ホームヘルパーの資格を得て
自己流で介護し、自宅で看取った家内はもう居なくなり、他に介護をするような人も無いのに、ホーヘルパーの
資格を取ろうと学校に通い始めました。強いて言えば、何時の日か自分が介護を受ける身になる時に何かの
参考になるのでは、と言うのと、半ば冷やかし半分と言うのが勉強を始めた理由でた。勿論、資格を取って
この年で就職する気は毛頭ありません。

1. ホームヘルパーって何だ ?
1.1 ホームヘルパーの仕事

ホームヘルパーは昭和30年に老人家庭奉仕員と呼ばれ法制化され、平成2年からホームヘルパーと呼称が
変わっています。日本語では訪問介護員です。2004年、介護保険法が施行され脚光を浴びるようになりました。
主な役目は、痴呆症等の老人を抱えた家庭を訪問して、毎日の介護で疲れきっている奥さん、或いはご主人、
お嫁さん等、家族を助けて、その家のお年よりの日常生活を介助するのが主な役目ですが、特別養護老人
ホームに勤務してお年寄りの介護する人の方が多いようです。従って、これは毎日、要介護者と接する業務で
、医師の指示で医療に従事する看護婦さん(今では看護士)とは仕事の内容が異なっています。
要介護者の残存能力を生かし、自分で身の回りのことが出来るようになることをめざしての介護の内容は
大きく次の二つに分けられ、その他家族の相談にのり助言することも含まれています。

      (1) 身体介護           (2) 生活介護
        身体を拭く             食事の支度
        入浴の手伝い            洗濯、衣類等の補修
        排泄の世話             掃除
        食事の手助け            買い物
        衣服の着せ替え
        移動
1.2 ホームへルパーの資格
 平成7年から養成研修制度が開始され、次の3つの資格に区分されています。

3級 上記の作業の中で、被介護者の身体に触れる仕事は出来ません。従って、出来るのは生活介護だけになり、限られた仕事だけなので就職先も限られ、3級を目指す人は殆どおらず何れ廃止されるようです。

2級 他人の身体に触れる介護が出来る資格で上記の(1)、(2)の作業が認められる資格で普通にホームヘルパーと呼ばれるのは2級の人達です。

1級 2級の人たちの上に立ち指導も行う人たちで、2級の資格を取ってから、更に上の教育を受けた人に与えられる資格です。ホオームヘルパーを兵卒とすれば、その上の下士官といったところです。
間違われるのが、介護福祉士でこれはホームヘルパーの上に立ち個々の被介護者の介護方針等を立てたりするホームヘルパーの上の職務で、国家試験に受かった人達で、兵隊で言えば士官と言うことになります。
老人ホームなどからの多くの求人広告で応募を求められているのは2級の資格を持つ人達です。但し、家族同志がお互いを介護する場合はホームヘルパーの資格は要りません。あくまでも他人を介護する場合に資格が要ることになります。ただ、この場合は自己流の介護になり腰を痛めたりしますが、ホームヘルパーの勉強をしていれば如何にお互いが苦労せず介護が出来るかが分かり大いに役に立ちます。

2. ホームヘルパーの学校と授業内容
2.1 学校

  普通の学校とは違って、各地にある厚生労働省の認可を得た事業所が生徒を募集して2級の場合、教室で約50時間の授業と送付される全部で1,000ページに及ぶ"社会福祉概論"、"医学基礎知識"、"介護学"、"家政学"などの教材を自宅で自習して記述式の試験が2回、と200題のマークシートによるテストとを受けることが前提となり、テスト結果は平均70点以上が必要とされています。私の場合、記述式は満点、マークシートの結果は平均95.5点でした。これらが終わってから、現在は、特別養護老人ホーム等に4日間通い、実地での実習が要求されます。全部終了すると自動的に資格が与えられます。学資は学校により若干異なりますが\80,000ぐらいです。

2.2 授業
毎日通える人は8日間、土曜または日曜のコースでは二ヶ月通うことになります。生徒は、若い女性が殆どですが、最近では男子の受講者も何人かいるそうです。私のクラスは7名で女性は6名、その中で奥さんは2名でした。間もなく傘寿を迎える私は、今までで最年長の生徒だそうです。 教室には電動リクライニングベッドなど各種のベッド、色々な種類の車椅子、ポータブルトイレ、浴槽などが設備されております。授業は、福祉関係、医学の基礎知識等の講義が最初にあり、その後は、教室にあるベッド、車椅子、ポータブルトイレ等を使って生徒達がペアになり、お互いに介護する人、介護される人になって床ずれ防止のためのベッドでの体位の変換、ベッドから車椅子への移動、寝たままでの衣類の着替え、実際に体験してみると、着替えの場合、前にボタンのある前開きよりもボタンの無い丸首の方がやり易いこともわかりました。その他、寝たままでの洗髪、おむつの交換など排泄行為の介護方法などお互いにやりやすい色々な動作を学習します。普通、ホームヘルパーの仕事は腰を痛めると言われていますが、ヘルパーも腰を痛めず、介護される人も楽に介護を受けられるかの実技の実習は大いに勉強になりました。

訪問入浴自己負担は\1,300ぐらい
食べさせかた


椎名ひろみ先生の分かり易いイラスト


例えば、腰を痛めている人を椅子から立たせる場合、
普通は、相手の脇の下に両腕を差し入れて、"よいしょ"

と上に引き上げて立たせますが、図の様に、
@ 両足を後ろに引いてください、
A 前にお辞儀をする格好をして下さい、
B 私の両手を掴んでください、
C 身体を反り上げるようにして下さい、と言う動作でお互いに楽に立たせることが出来ます。これは、 Body dynamics と呼ばれる、お互いの体位、重心位置の移動を考えた動作です。ちょっとやってみて下さい。

実際にベッドで横になっている若い女生徒を抱きかかえたりすると、普通ならセクハラで牢屋に入れられてしまいますが、こんなことが堂々と出来、髪を洗ってやったり洗ってもらったりしていると、ちょっとしたルンルン気分になります。このようにして、授業が終わり、自習によるテストも合格点が取れたら、次は老人ホームに通っての実地の勉強です。

2.3 実習
 私は家の近くにある日本でも最大規模の特別養護老人ホームである浴風会で実習を受けました。ここには、1,700人の要介護者が入居しています。老人ホ−ムに入れるのは介護保険に加入している65歳以上の人達で、(特例として45歳以上でも可能)一般的には介護度3以上の方々が対象になります。老人が増えていることと、全国的にこの種の施設が不足しているため介護度が5の人でも申し込んで数年間も待たされるケースは珍しくありません。序でに介護度の分類は次のようになっています。

要介護 1 立ち上がり、歩行などに不安定さが見られ、排泄、入浴に一部介助が必要
要介護 2 立ち上がり、歩行などが自力で出来ない、排泄、入浴に一部介助が必要
要介護 3 上記の他、衣服の着脱などに介助が必要
要介護 4 上記の状態が更に進行し日常生活をする能力がかなり低下し、食事にも一部介護が必要
要介護 5 生活全般にわたって全面的な介助が必要

私が担当させられた施設は要介護 4以上の人たちが100人近く居るところで、80%以上がお婆さんで殆どが自分では歩けず車椅子を必要とし、主に4人部屋に入っていました。
部屋は普通の病院の病室と同じで、違うのは各部屋の入口にトイレと洗面台があり、長期に滞在するので衣類の収納箪笥が大きいぐらいです。朝起きて洗面をしてもらい、その後食堂に集まって朝食が始まります。
上手く飲み込みが出来ないので流動食の人が多く、自分で食べられる人は半数以下でした。

曜日によってその後、着替え、入浴(機械浴)や自由時間があり、老人達との話し相手もやらされます。難聴の人、何を言っているのか分からないような人達との話し相手には往生します。大人しくテレビを見ている人は殆どいませんでした。テレビをみても分からないからでしょう。昼食の後は、おむつ交換等が行われていました。連続して40人もの入浴後の老婆の手足と頭を拭き、髪のブラッシング、靴下と靴を履かせ車椅子を押して各自の部屋やロビーに送り届けたり、各部屋を廻って20人ぐらいの老婆のおむつの交換を連続して見ていると、悪臭もあり教室での若い女性とのルンルン気分はすっかり吹き飛んでしまいました。中には、暴力を振るったり、怒号を浴びせたりする人も珍しくなく、実際に、老人ホームに勤めている若い方達の仕事は本当に大変だと痛感しました。
ヘルパーが老人を虐待したと言う記事が新聞で報じられましたが、殴られたりして報復したくなる気持ちも分かる様な気がしました。こんなような日を4日送り、終了すると終了証明書が送れてきて、ホームヘルパーの資格が与えられます。
そうして、施設で働きたい人たちは厳しい環境のもとで就職することになります。

青梅にある特別養護老人ホーム
4人部屋の一部病院と違い収納庫が大きい

       
               2階と3階に各50名が収容されている

3. 養護老人ホ−ム
3.1 ホームでの生活

 98歳になる痴呆症の私の母親が4年前にやっと特別養護老人ホームに入ることが出来ました。3年近く待たされ、それまでは、デイサービスとショートステーを受けていました。デイサービスとは、週に2〜3日、ホームのマイクロバスが迎えに来てホームで朝9時頃から午後4時頃まで預かってくれるサービスで、ショートステーとは2〜3日ホームに預かってもらうサービスです。この間、家族は介護から開放されて、自分達だけの平穏な生活が出来る仕組みです。
但し、これらのサービスを嫌がりずっと家に居たいという老人も結構多いようです。
ホームでは、ロビーでテレビを見ている人や、お互いにお喋りをする様な人は極めて少なく、本や新聞を読んでいる人も殆ど見かけません、大多数は机に凭れて眠っているか、妄想 ? に耽っています。テレビを見ても分からない、読書をする気力もまい、会話が満足に出来ないためだと思われます。一体、何のために生きているのかと疑いたくなります。
七夕の時に、字の書ける人たちが短冊に自分の願いを書いて笹に吊るしてあるのを見ましたが、"早くもとの身体になりたい"、"家に帰りたい"、"嫁がこわい"などの他に"早くお迎えが来て欲しい"と書いてある短冊には胸を打たれました。


3.2 老人ホームに入るには
 介護サービスの必要を感じたら先ず、本人か家族が区市町村の福祉事務所に申請します。担当部門でそれを受けて、調査員が家庭を訪問して介護を必要とする人の心身の状態と家族の様子を精しく調査して資料を作りコンピューターによる一次判定が行われます。次に、介護認定調査会で専門家による二次判定が行われ、その結果、要介護と認めるかどうかと介護度が決められます。認定された介護度の有効期間は6ケ月です。市町村は特別養護老人ホームに空きが出たら介護度の高い人から入居を斡旋してくれます。従って、空きが出るまではデーサービスやショートステーのサービスを受けるか、民間の介護施設からホームヘルパーの訪問介護を受けることになります。

結び
 福祉サービスに就いては、介護保険法のほか老人福祉法、身体障害者法、社会福祉法などの福祉六法も勉強する必要がありますが、上記はホームヘルパーと特別養護老人ホームの概要です。 自分が、将来介護を受けざるを得ない状態になったとき、遺産問題も含めて、どうすれば良いか今から考えておく必要があります。自分が今何処にいるか、今日は何月何日か、知人の顔が分からなくなった、幻覚妄想が出る、徘徊をするなどの障害を見当識障害と呼びますが、この様になった時、介護保険の恩恵を受けて生き永らえることが良いのか、 色々な老人ホームを見てきた結論としては、その前に自殺して方が世のためになるのではと思う様になりました。オランダでは数年前にユースアネイシア Euthanasia (尊厳死)が立法化され、日本では賛否まちまちです。調べてみたら尊厳死は末期癌の患者が対象で痴呆が進んでも簡単にさよならすることは難しいようです。

2007年2月



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