大型クルーズ船は安全か?


1. 大型クルーズ船
最近乗客が2,000人を超える大型クルーズ船が増えています。広い上甲板の上に大きなホテルを横にして乗せた様な船が殆どです。3,000人が泊まれるホテルはそうざらには無いと思いますが、乗客が3,000人を超える船は世界で8隻あり、22万トンの“ジェネシス”は、乗客数5,400〜6,400となっています。そして、乗客8,400人の37万トンの“かぐや”も計画されていると聞いています。日本最大の船、“飛鳥”(50,142トン)は乗客最大940人、乗り組み440人です。
2. 乗艇甲板(Embarkation Deck)が無い
乗組員も含めた乗員が救命艇に乗り込む甲板を乗艇甲板と呼び、普通、タイタニックの様に救命艇が配置されている甲板が乗艇甲板になっていました、最近のクルーズ船にはこの乗艇甲板がありません。救命艇は殆どの場合、上甲板付近の位置に各舷とも乗員全部を収容出来る(両舷で二倍)閉鎖型の救命艇が収納されていますが、これは客室の外側です。非常の場合、救命艇に乗り移ろうと船客はエレベ−ターに集まり大混乱になり、エレベーターが動かなくなった場合は階段も荷物を持った乗客で一杯になり、救命艇のある甲板はラッシュ時の電車の中と同じ状態になると思われます。最上甲板を乗艇甲板とすれば周りは広いので問題はありませんが、その位置は水面からかなり高い位置になり救命艇を下ろすには高すぎるので止むを得ず上甲板付近になっているようです。Royal Caribbean社の大型クルーズ船“Legend of the Seas” は写真によると乗艇甲板らしきものがありますが、十分な広さではないようです。

Legend of the Seas
船員を含めた総乗船者:2,527人、150人乗り救命艇14隻で2,100名、残りの632名は膨張式救命艇、救命筏に480人、小型艇 2隻で4人、合計収容人員は2,584人

3. 閉鎖式救命艇
海上人命安全条約では、船舶には各舷定員分の救命艇が要求されており、収容人員が150人を超える救命艇は禁じられています。従って、救命艇の数を減らすため、150人もの救命艇が多く搭載されています。さて、150人の乗員を緊急時に成るべく早く救命艇に乗せなければなりませんが、通勤電車の場合、定員は160人で片側に3〜4人が出入りできる扉が4か所あります。短い停車時間で乗り降りが出来る様に考えたもので、ホームも広いので毎日無事に通勤客を運んでいます。しかし、閉鎖型救命艇は入り口が狭く殆どが一人ずつしか救命艇に乗り込めません。そうして、プラットホームのような広い乗艇甲板もありません。150人が一人ずつ乗り込むにはかなりの時間が掛かります。緊急時にこれで良いのでしょうか。肌寒い気がします。

JR230型電車

全閉囲型救命艇(信貴造船H/Pより)

4.対策
4-1 旅客定員の制限
海上人命安全条約では救命艇の乗員を最大150人として、これ以上の大きな救命艇を禁じているのは良い事だと思いますが、肝心の本船の定員には規制は無く上記の通り3,000人以上の船も多くあります。今年(2,012年)の1月に転覆した“Costa Concordia”は遭難海域が岸の近くだったので犠牲者も多くはなく不幸中の幸いでしたが、若し、これが大海原の真ん中だったらかなりの犠牲者が出たと思われます。因みに、本船の客室数は1,430室、ホテルオータニは1,479室で前者の周りは四面海で後者の周りには広い庭園があります。また、4月にはフイリッピン沖で乗客590人、乗組員411名の豪華客船“アザマラクエスト”が火災で漂流しています。乗組員5名が負傷した程度で大騒ぎにはなっていませんでしたが、海上人命安全条約を見直して旅客定員にも上限を設けるべきだと考えます。

CostaConcordia
全閉囲型救命艇

4-2 乗艇甲板の設置
タイタニックの様にあれだけ広い乗艇甲板があり、沈没までかなり長い時間があったにも拘らずあれだけの犠牲者が出ています。十分な広さの乗艇甲板を設ける必要があると思います。最上甲板に救命艇を配置することが困難であり現在の位置に救命艇を配置するならば、その甲板はオープンデッキとして機関室区域を除いてその部分には客室を設けず、多くの乗客が集まることの出来る運動場とかホールの様な設備にするのも一案だと考えます。
タイタニックの乗艇甲板と
開放式救命艇

4-3 開放式救命艇
閉鎖式は車と同じように雨にも寒冷地でも居住性は開放式と比べ随分と優れていますが、いざという時に海上に浮かんでいる人を救助するのは困難と思われます。タイタニックや氷川丸にもあるような数隻の開放式救命艇の配備も考えておく必要があると思います。
5. 終わりに
“飛鳥”、“パシフィックビーナス”、“日本丸”にも乗せてもらいました。短期航海で世界一周航海ではないので、航海中、国際条約で決められた避難訓練がどのように行われているのか分りませんが、もう一つの問題として乗組員は第三国人が多数を占めているので意思疎通のための言葉の問題もネックになると思います。こう考えると、大型クルーズ船に乗るのは聊か躊躇してしまいます。
2,012年9月                         石川一郎











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